天山山脈は、新疆ウイグル自治区をほぼ東西に走り、いくつもの支脈をもつ大山系。日本の本州がスッポリ入ってしまうほど。天山山脈から流れ出る河川は、その山麓に多くのオアシスをつくりました。古代のシルクロードである天山北路、天山南路は、天山山脈の南北の両麓に並んでいるオアシスを結ぶ交易路でした。
　さて、今日はその天山山中のバインブルクとお別れし、天山山脈をぬけ南麓のクチャへと向かいます。
　旅も後半。皆さん疲れも感じさせず、元気そのもの。それというのも、素晴らしい出会い、素晴らしい景色、美味しい料理、国は違えど和気あいあいの仲間があったればこそ。それを物語るかのようなエピソードを一つ。
　昨夜、バインブルクの町へふらっと出かけたさん Ｉ さん。シシカバブの匂いにつられ店をのぞくと、「一本どうぞ」と差し出され、ただでごちそうになりました。店の主はどこかであったことがあるような人だなとそのときチラッと思ったそうなのですが・・・。さて翌日、クチャにむけ出発。天山をバックに放牧された馬という格好のロケーション、車を止め小休止。近寄ってきた１号車のドライバー、何かを伝えようと身振り手振り。カメラを貸してといっているのかな、いや違う。口にくわえた肉を櫛から抜くジェスチャーに、ひらめきました。その顔は！、昨夜の、シシカバブの！！、オヤジさんだぁ！！！　朝、顔を合わせても挨拶するでもなくお礼をいうでもなく知らんぷりの Ｉ さん、そこで、シシカバブ屋のオヤジは俺だよと一生懸命に知らせたのでした。ドライバーはバインブルク在住、シシカバブ屋も兼業していたのでした。あぁそうだったのかぁとみんなで大笑い。みんなの底抜けの笑い声は天山にまで届いたかな。
　天山の山中へとさしかかります。工事中のところが多く土埃りはひどいものの思ったほどの悪路ではなく、景色を楽しみながら走ります。途中の大竜池により昼食をとりました。店の人は起きてきたばかりでちょっと待たされましたが、アツアツのちょうどいい塩加減のおいしい料理を食べることができました。オーナーの親戚の一人は日本の野球チームに所属しているとか。こんなところで意外なつながりが。オーナーが、「大和民族是文明偉大的民族」と書いて私たちに示してくれました。〈日本人は優秀で礼儀正しい>というような意味になるらしいです。ほめられちゃった、ありがとう、うれしいです。
　再び四駆でクチャへと。景色が次第に乾燥した茶色の世界へとかわっていきました。
　ここで四駆とはお別れ。ドライバーの皆さんナイスドライブ、ありがとうございました。

天山をバックに草を食む馬

エピソードに大笑い

天山山中を走る

山中の遊牧民のパオと羊の群れ

工事中のため迂回路を行く

大竜池

私たちのための昼食調理中

昼食ができるまでくつろぐドライバー